季節のことば / 茶杓の銘 5月 「薫風(くんぷう)」
はじめに
「茶杓の銘」とは、茶道具の「茶杓」に名付けられた名前のことです。
お茶会では、道具の取り合わせについて亭主に尋ねる場面があるのですが、その時にいかに季節や場に添った銘を紹介できるかで、亭主のセンスが問われます。
お茶会に参加する機会がなくても、ことばを通じて季節を感じていただけたらと思います。月に1つずつご紹介していきます。
「薫風」とは?
初夏に若葉や青葉のあいだを吹き抜ける風を指します。
新芽の鮮やかな緑の葉を揺らす風は、見た目にも清々しく気分をリフレッシュさせてくれますね。このように香りが感じられるような初夏の風を薫風と言います。
「薫」という字
「薫」という文字は、袋に入った香草を火であぶった形からできた象形文字だそうです。
香草をいぶし・くゆらせることで、香草の匂いが立ちこめている様子を現しています。
お香などは、「薫」の字を使って、「薫(た)く」と表現しますよね。
「香」と「薫」の違いは?
ここまでくると、「香り」と「薫り」の違いも気になりますよね。
【香り】鼻で感じられる良い匂い。
花の香り。香水の香り。など
【薫り】比喩的・抽象的なもので、それらしい趣(がある)という意味。
文化の薫り。ロマンの薫り。など
そのため、5月の時候の挨拶にもよく使われる「風薫る5月」とは、新緑を吹き抜ける清々しい“香りが感じられるようだ”という意味で、「風香る~」ではなく、「風薫る」となります。
つい、「先週までのゴールデンウイークにまた戻りたい・・・」と気持ちがよぎりますが、薫風を感じて、気分を入れ替えてがんばりましょう。