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【茶道の作法】和室での振る舞い:立ち方、歩き方

一般的にあまり意識されていないかもしれませんが、茶道では立ち方、歩き方の作法があります。

「畳の縁(ヘリ)は踏んではいけない」などは、聞いたことがあると思いますが、この他にもいくつか作法があります。

知っていれば茶道の場面だけでなく、和室での振る舞いに自信が持てますよ。
今回は、茶道での立ち方・歩き方を具体的にご紹介します。
裏千家茶道としてのご案内です。

茶道での歩き方の作法、4つのポイント

1.畳の縁は踏んでいない
2.すり足で歩く
3.一畳を縦・対角線は4歩、横は2歩で歩く
4.入る時は右足から、出る時は左足から

それぞれ解説しますね。

 1.畳の縁は踏んではいけない

“茶道として”という以前に、日本の畳文化のマナーですね。
理由は諸説ありますが、かつて武家屋敷では畳の縁にその家の家紋が入っていたり、豪華な装飾がありました。
そのため縁を踏むことは、その家を侮辱する行為と見なされたそうです。

その他、物理的につまづきやすいという話や、敵が床下から槍を突いてくるのが畳の隙間、つまり縁から狙われ危険だから、という説などもあります。

 2.すり足で歩く

お能の歩き方のように、畳から足を上げずに足裏を畳に擦りながら歩きます。

足を畳に擦ることで、“シャーシャー”と音がすると思いますが、すり足の音は衣擦れの音と共に茶室の外に居る亭主にとっては、「まだ席入りの途中だな」という合図となります。
全ての音が静まってから亭主が茶室に入り、お点前が始まります。

このように茶道では、あえて音を立てることも作法となります。
(もちろん必要以上に音を立ててはいけません!)

 3.一畳の歩数:縦・対角線は4歩、横は2歩で歩く

一畳の縦(長い辺)や対角線を歩く時は4歩で歩きます。横(短い辺)は2歩で歩きます。

比較的小股で歩く印象かと思いますが、着物で歩くとちょうど良い歩幅に感じるのではないでしょうか。

 4.入る時は右足から、下がる時は左足から

“入る”“下がる”とはどういうこと?と思われるかもしれませんね。
大まかに「目的をもって向かうことを“入る”」、「目的を終えて移動することを“下がる”」と思ってください。

歩く時だけでなく、立ち上がる時も同じです。
次の項目で具体的なケースをご紹介します。

右足から?左足から?大前提のルール

立ち上がる時、歩く時のいずれも、「向かうのか/下がるのか」によって左右の足が変わります。
立つ時・歩く時はさまざまな場面がありますが、大前提を覚えていれば自然と判断ができると思います。
*お点前によっては、逆となる場合があります。

 右足の場合

茶室へ入る時
床の間に向かう時
(亭主)点前座に向かう時

目的をもって“向かう時”が右足

 左足の場合

退席する時
床の間の拝見を終え、下がる(次へと移動する)時
(亭主)点前座から下がる時

目的を終え、“下がる時”が左足

大前提を踏まえて、立ち方、歩き方を具体的にご案内します。

右足からの立ち方、歩き方

例)茶席に入る時、床の間に向かう時など

1.つま先を立て、お尻をかかとにしっかり乗せる
 *つま先を立てないと軸が安定しません。

2.右足を立てる

3.立ち上がる
 *そのまま立ち上がると、右足が前に出ています。
  揃えないようにしましょう。

4.歩く
 *正座から立った場合は、身体の分を1歩と数えます。
  そのため、立ち上がった時点で右足が出ています。
 *縁を越える時は、左足は縁の内側ギリギリまで運び、右足で越えます。

左足からの立ち方、歩き方

例)退席する時、床の間の拝見を終え、下がる(次へと移動する)時

1.つま先を立て、お尻をかかとにしっかり乗せる
 *つま先が立てられないということは、足が痺れている証拠です。
  しっかりとつま先が立てられるまで足が治るのを待ちましょう。

2.左足を立てる

3.立ち上がる
 *そのまま立ち上がると、左足が前に出ています。
  揃えないようにしましょう。

4.歩く
 *正座から立った場合は、身体の分を1歩と数えます。
  そのため、立ち上がった時点で左足が出ています。
 *縁を越える時は、右足を縁の内側ギリギリまで運び、左足で越えます。

文字を追っているよりも、実際に身体を動かして試してみると良く分かると思います。

難しく考えずに回数を重ねて身体に覚えさせて、自然な振る舞いを目指しましょう。