【茶道の作法】和室での振る舞い:立ち方、歩き方
一般的にあまり意識されていないかもしれませんが、茶道では立ち方、歩き方の作法があります。
「畳の縁(ヘリ)は踏んではいけない」などは、聞いたことがあると思いますが、この他にもいくつか作法があります。
知っていれば茶道の場面だけでなく、和室での振る舞いに自信が持てますよ。
今回は、茶道での立ち方・歩き方を具体的にご紹介します。
*裏千家茶道としてのご案内です。
茶道での歩き方の作法、4つのポイント
1.畳の縁は踏んでいない
2.すり足で歩く
3.一畳を縦・対角線は4歩、横は2歩で歩く
4.入る時は右足から、出る時は左足から
それぞれ解説しますね。
1.畳の縁は踏んではいけない
“茶道として”という以前に、日本の畳文化のマナーですね。
理由は諸説ありますが、かつて武家屋敷では畳の縁にその家の家紋が入っていたり、豪華な装飾がありました。
そのため縁を踏むことは、その家を侮辱する行為と見なされたそうです。
その他、物理的につまづきやすいという話や、敵が床下から槍を突いてくるのが畳の隙間、つまり縁から狙われ危険だから、という説などもあります。
2.すり足で歩く
お能の歩き方のように、畳から足を上げずに足裏を畳に擦りながら歩きます。
足を畳に擦ることで、“シャーシャー”と音がすると思いますが、すり足の音は衣擦れの音と共に茶室の外に居る亭主にとっては、「まだ席入りの途中だな」という合図となります。
全ての音が静まってから亭主が茶室に入り、お点前が始まります。
このように茶道では、あえて音を立てることも作法となります。
(もちろん必要以上に音を立ててはいけません!)
3.一畳の歩数:縦・対角線は4歩、横は2歩で歩く
一畳の縦(長い辺)や対角線を歩く時は4歩で歩きます。横(短い辺)は2歩で歩きます。
比較的小股で歩く印象かと思いますが、着物で歩くとちょうど良い歩幅に感じるのではないでしょうか。
4.入る時は右足から、下がる時は左足から
“入る”“下がる”とはどういうこと?と思われるかもしれませんね。
大まかに「目的をもって向かうことを“入る”」、「目的を終えて移動することを“下がる”」と思ってください。
歩く時だけでなく、立ち上がる時も同じです。
次の項目で具体的なケースをご紹介します。
右足から?左足から?大前提のルール
立ち上がる時、歩く時のいずれも、「向かうのか/下がるのか」によって左右の足が変わります。
立つ時・歩く時はさまざまな場面がありますが、大前提を覚えていれば自然と判断ができると思います。
*お点前によっては、逆となる場合があります。
右足の場合
茶室へ入る時
床の間に向かう時
(亭主)点前座に向かう時
⇒目的をもって“向かう時”が右足
左足の場合
退席する時
床の間の拝見を終え、下がる(次へと移動する)時
(亭主)点前座から下がる時
⇒目的を終え、“下がる時”が左足
大前提を踏まえて、立ち方、歩き方を具体的にご案内します。
右足からの立ち方、歩き方
例)茶席に入る時、床の間に向かう時など
1.つま先を立て、お尻をかかとにしっかり乗せる
*つま先を立てないと軸が安定しません。
2.右足を立てる
3.立ち上がる
*そのまま立ち上がると、右足が前に出ています。
揃えないようにしましょう。
4.歩く
*正座から立った場合は、身体の分を1歩と数えます。
そのため、立ち上がった時点で右足が出ています。
*縁を越える時は、左足は縁の内側ギリギリまで運び、右足で越えます。
左足からの立ち方、歩き方
例)退席する時、床の間の拝見を終え、下がる(次へと移動する)時
1.つま先を立て、お尻をかかとにしっかり乗せる
*つま先が立てられないということは、足が痺れている証拠です。
しっかりとつま先が立てられるまで足が治るのを待ちましょう。
2.左足を立てる
3.立ち上がる
*そのまま立ち上がると、左足が前に出ています。
揃えないようにしましょう。
4.歩く
*正座から立った場合は、身体の分を1歩と数えます。
そのため、立ち上がった時点で左足が出ています。
*縁を越える時は、右足を縁の内側ギリギリまで運び、左足で越えます。
文字を追っているよりも、実際に身体を動かして試してみると良く分かると思います。
難しく考えずに回数を重ねて身体に覚えさせて、自然な振る舞いを目指しましょう。
【茶道のマナー】3種類のお辞儀について
茶道の所作の一つひとつには、常に相手を敬う気持ちが表れているため自然とお辞儀をする場面が多くあります。
裏千家茶道では、3種類のお辞儀を使い分けています。
茶道のマナーとしてご紹介しますが、日常生活でも活かせると思いますので覚えておきましょう。
*裏千家茶道としてのご案内になります。
他の流派では手の置き方が異なることがあります。
茶道のマナー、3種類のお辞儀とは?
茶道のお辞儀には、「真(しん)」「行(ぎょう)」「草(そう)」の3種類があります。
書道で文字の種類で「楷書」「行書」「草書」というのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
こちらと同じ考え方で、丁寧さの違いで分けられています。
「真のお辞儀」 最も丁寧なご辞儀です。
「行のお辞儀」 少し崩したお辞儀です。
「草のお辞儀」 最も軽いお辞儀で、会釈のイメージです。
それぞれについて詳しく見て行きましょう。
真(しん)のお辞儀
最も丁寧なお辞儀です。お点前の始めと終わりの「総礼(そうれい)」の時や床の間・道具の拝見の時に行います。
「真のお辞儀」ポイント
手のひら全体を畳につける
左右の手の指先(中指・人差し指あたり)をつける
*親指は開かず、他の指と揃えるように気を付けましょう
肘を緩やかに曲げながら頭を下げる
*上体は緩やかな一直線。猫背や頭だけ下げることのないようにしましょう
*胸とひざの間はこぶし1つ半程度空けます
一呼吸(3~4秒)程度の時間をかけ、頭を起こす
行(ぎょう)のお辞儀
お菓子を取り回す時など、次の方へ「お先に」と言う時のお辞儀です。
「行のお辞儀」ポイント
指の第二間接くらいまでを畳につける
*両手の指先は空けずに揃えます
肘を緩やかに曲げながら頭を下げる
*胸のひざの間はこぶし2・3個程度空けます
1秒で頭を下げ、1秒で戻る程度の時間をかける
草(そう)のお辞儀
会釈程度の軽いお辞儀です。
亭主がお点前の途中で「お菓子をどうぞ」や「お仕舞にします」というひと声を掛ける時などに行います。
「草のお辞儀」ポイント
指先のみ畳につける
*両手の指先は空けずに揃えます
上体を軽く下げます
*首だけにならないよう注意しましょう
お辞儀をすると分かる!座る位置について
3種類のお辞儀を知ると分かると思いますが、お辞儀をする時には手の位置が重要になってきます。
最も丁寧な「真のお辞儀」をする時には、手のひら全てを畳につけます。
そのため、畳の縁からご自分の膝まで手のひらが入るスペースが必要です。
そのスペースは、畳の縁から膝まで16目と言われています。
お茶席で畳の目の数を数えるのはよくないですが、手のひらをぱっと置いてしっかり入ることを確認して座る位置を定めると良いと思います。
ちなみに亭主やご一緒する客同士でご挨拶する時は、扇子を前に置いてお辞儀をします。
その時には、畳の縁から1つ空けて2つ目に扇子を置きます。
この時も畳の縁から16目空けて座っていれば、ちょうど収まると思います。
細かいことも挙げましたが、お辞儀は相手を敬うところから生まれる所作です。
「この場面では”真”じゃなきゃ!」「”行”じゃなきゃ!」と考えすぎてしまうと、気持ちを表せずに不自然なものになってしまうと思います。なによりその場を楽しむこともできませんね。
場にそぐわない丁寧さもまた不自然になってしまうので、難しいところだと思います。
お辞儀には3種類あることをお伝えしましたが、「相手を敬う気持ち」を持って経験を重ねていくことでだんだんと身についていくのではないかと思います。
【茶道の知識】実はシンプル!?茶道のお点前は5つのパートで構成
「茶道のお点前」というと何かと細かいルールがあって、難しそうなイメージがありませんか?
「お茶を点てるまで何をやっているのだろう??」という疑問も。。。
実はどんなお点前も、流れはほぼ5つのパートで構成されているんですよ。
10分程度のお点前も、30分以上かかるお点前もそうなのです。
それぞれのパートについて順を追ってご案内しますね。
*亭主の所作の解説ではなく、お点前全体の流れのご紹介です。
茶道のお点前の構成、5つのパートとは?
茶道のお点前は、下記の5つのパートで構成されています。
1.道具を運び出す
2.道具を清める
3.お茶を点てる
4.仕舞う(道具を清め、片づける)
5.道具を拝見に出す(道具をお披露目する)
1.道具を運び出す
総礼(そうれい:一同で一礼)をしたら、亭主はお点前に使う道具を茶室に運んできます。
水が入った水指(みずさし)や茶碗・茶筅、棗、建水などを往復して所定の位置に置いていきます。
2.道具を清める
これから使用する道具を清めます。
「清める」とは、お湯を通したり、拭いたりといった動作です。
もちろん、運んでくる前にも綺麗にしていますが、お客様の前でもあらためて清めます。
所作としては、棗や茶杓は帛紗(ふくさ)を捌いて拭き清めます。
茶碗はお湯を入れて温めると共に、茶筅(ちゃせん)もお湯にくぐらせてお湯に馴染ませ清めていきます。
3.お茶を点てる
全てのお道具が清められたところで、抹茶・お湯を入れて茶筅でお茶を点てます。
客側は、この頃までにはお菓子を食べ終えておきます。
*濃茶の場合は、別室でお菓子を食べてから茶室に入室します。
4.仕舞う(道具を清め、片づける)
使い終わった道具を洗ったり、拭いたりして再び清め、最初に運び出した位置へと戻していきます。
5.道具を拝見に出す(道具をお披露目する)
お点前に使用した道具を客側にお披露目をします。
客側は道具の一つひとつを近くでじっくり見ることができます。
ここでは、正客が代表して亭主に対して道具について尋ね、亭主が答えていくという問答を行います。
茶道のお点前、どのパートを楽しむ?
お点前の流れ、いかがでしたか?
初心者の人が最初に習うお点前でも、ベテランの人が行う複雑なお点前でも基本的にはこの5つのパートで構成されています。意外とシンプルではないですか??
全体の構成が分かっていると、一席の楽しみ方が変わってくると思います。
私が考える、各パートでのお点前の楽しみ方をご紹介します。
1.「道具の運び出し」の楽しみ
お道具が運び出されてくるときは、客側にとっては「今回はどんなお道具が出てくるのだろう?」という楽しみがあります。
2.「道具を清める」パートの楽しみ
”帛紗さばき”が始まると、茶道らしさが出てきますね。
意外と人気!?があるのは、茶筅を持ち上げて回転させる「茶筅通し」の場面です。友人にも「それカッコイイ」と言われて驚いたことがあります(笑)。
3.「お茶が点つ」楽しみ
茶道のお点前として、一番分かりやすい場面ではないでしょうか。
茶筅を振る手首の動きは日常ではあまりないので、その速さに驚かれる方も多いです。客側にとっても、お菓子の後で美味しいお茶を待つ楽しい時間ですね。
4.「仕舞い」の楽しみ
お点前としては地味なパートですが、お茶が出た後なので和んだ空気の中、淡々と仕舞われていくお道具を眺める、名残り惜しさを味わう時間です。
5.「道具の拝見」の楽しみ
道具の取り合わせは、その一席のテーマや趣向など亭主の“意図”が表れています。
亭主は、季節に添った趣向やお祝い事や初釜といった節目にちなんで、絵柄や銘を取り揃えています。
そのため、「道具の拝見」は亭主の取り合わせの「妙」や「その人らしさ」を感じる場面なので、茶道をする人にとっては、ここが一番楽しい時間となります。
「茶道の学びに終わりはない」と言われますが、こうした道具の取り合わせを拝見して学び、自分もまた取り合わせを考え、工夫するといったことが茶道の長い長い学びへとつながっていきます。
【茶道のマナー】服装や持ち物のおさえるべきポイント
初めてお茶会に参加する、茶道のお稽古に出席するなど、茶道に触れるときにどんな服装で参加したらよいか、何を持っていけばよいか心配ですよね。
何かと難しそうな茶道の世界。ポイントをおさえれば怖いことはありません!
安心して参加できるように解説いたします。
【茶道のマナー】服装(洋服の場合)と持ち物
「茶道は着物を着るべきですよね?」と思われるかもしれませんが、洋服でも問題ありません。
もちろん参加するお茶会や教室の格式によっても変わるので、事前に主催者の方に確認するのが一番です。
洋服の場合は、下記のポイントをおさえましょう。
1. 膝が隠れる丈のスカート
お茶会では、スーツやワンピースなど、きちんとした服装を心がけましょう。
男性もスーツが望ましいです。
お稽古など気軽な場であっても、女性は膝が隠れる丈のスカートをはきましょう。
足の状態があらわになることは良く思われないため、女性はズボンを避けたほうが無難です。
実際のところ、ズボンのほうが足がしびれやすいですし、足を崩したい場合にスカートのほうが自由が利きます。フレアスカートやプリーツスカートなど、広がりのあるスカートのほうが足が隠せるので安心して(!?)足のしびれを治せるのでおすすめです。
2.時計やアクセサリーは外す
茶碗や菓子器などの割れ物を扱うため、貴重な道具を傷つけないよう時計や指輪、長いネックレスなどのアクセサリー類は外しましょう。
同じ理由で、ネイルアートもNGです。
3.長い髪は束ねる
茶道ではお辞儀をする場面が多くあります。
髪が落ちたり、茶碗に入ったりすると、衛生面からもよくありません。
頭を下げた時に髪が顔にかかる長さの時は、ゴムやシュシュなどで束ねましょう。
アクセサリーの考え方と同じく、金属製の髪留めなども避けましょう。
4.白い靴下を用意する
茶室は清浄を保つ場所です。
本来であれば白い足袋を履いて入る場所ですので、それに準じて茶室に入る時には白い靴下を履いて入りましょう。もちろん白い足袋を履いても問題ありません。
5.ブーツは履いていかない
お茶室は着物で入ることが基本につくられているため、下足箱も草履が入るサイズが基本です。
そのためブーツを置く場所がないので、冬場は寒くてもブーツは履かないようにしましょう。
【茶道のマナー】服装(着物の場合)と持ち物
着物であればなんでもOKというわけではありません。
その場に合った格の着物である必要があります。
着物や持ち物は、下記のポイントをおさえておきましょう。
1.茶道の場では、色無地の着物がオールマイティー
茶道の場面では、お茶やお菓子、お道具を引き立てるという考えがあるため、着物は色無地が基本となります。
茶道のために初めて着物を誂えるのであれは、色無地で一つ紋があると重宝します。
ただ、お祝い事などおめでたい主旨のお茶会であれば、訪問着や附下などが良い場合もあります。華やかな着物で会を盛り上げるといった参加者としての礼もありますので、心配な場合は主催者の方に確認すると良いでしょう。
ごく身近な方との会であれば、古典柄など格の高い柄の小紋も良いと思います。
「何でもいいですよ!」と言われても、紬は普段着の位置づけのため失礼になります。
茶道のお稽古や体験であれば、色無地~小紋がちょうど良いと思います。
2.時計やアクセサリーは外す
洋服の場合と同じく、道具を傷つけないように外しましょう。
かんざしなどの髪飾りもアクセサリーの位置づけです。
お辞儀をした時に落ちることも考えられるため、茶道の場では控えましょう。
帯留めもお稽古ならある程度なら許されると思いますが、しないほうが無難です。
茶道の持ち物:お茶会であると便利なもの
茶道の場面での基本的な服装や持ち物は上記のものをおさえれば問題ないと思います。
お茶会で持っているとさらに便利なものをご紹介します。
1.風呂敷
お茶会で持ち歩いて良いのは、帛紗ばさみ/数寄屋袋のみとなります。
それ以外の荷物(コートやカバンなど)は、入口で預けるため、コンパクトにまとめなければなりません。
そのためにも風呂敷を1枚用意しておくと、まとめやすく便利です。
2.数寄屋袋
入口でかばんを預けるということは、貴重品、ハンカチ、口紅などといった小物は持ち歩く必要があります。しかし、帛紗ばさみのサイズでは少々心もとないのです。。。
そのため私のおすすめは、帛紗ばさみよりも大きく、フタが締められる数寄屋袋が収納力があり便利ですよ。
ちなみに着物の場合、帯や袂(たもと)に小物を仕込めるので、実は使い勝手が良いのです。
3.大判のハンカチ
正式なお茶会の場合、懐石料理をいただきます。
正座でいただくので、膝周りにこぼして着物を汚さないように、大判のハンカチを敷くと便利です。
着物であれば、帯に挟んでしまえば固定できますよ。
【ご参考】基本的なお茶の道具
【茶道の作法】お菓子の食べ方、抹茶の飲み方
茶道の楽しさの1つはなんといってもお菓子と抹茶をいただくことですよね。
「茶道にはいろいろお作法があったはず・・・」と思いつつも、それを知らないとどこから手をつけて良いのやら!?楽しめませんよね。
今回は茶道の作法として基本となる、お菓子の食べ方と抹茶の飲み方についてご案内します。
【茶道の作法】お菓子の食べ方
1.隣りの方に「お先に」と挨拶をする
2.菓子器を両脇から軽く持ち上げて感謝をする
*高さは5cm程度で大丈夫です。
3.帛紗挟みから懐紙を取り出し、膝前に置く
~懐紙の扱い~
*懐紙は基本的に束のまま使用します。
*懐紙の二つ折りの「わ(山折り側)」を自分側に向けます。
*水気のあるお菓子の場合、撥水性のある「りゅうさん紙」があると便利です。
4.箸(黒文字)を取る
~箸の扱い~
右手で箸の中央を上から取り、左手で下から受け、右手を右側から滑らすようにして持ちましょう。
*箸は、長さにより横一文字に置かれていることもあります。
写真では、菓子器に対して箸が短いため斜めに置かれています。
5.左手を菓子器の左側に添えて、菓子を取り懐紙に乗せる
~お菓子の扱い~
*菓子器には、お菓子が奇数個(1個、3個など)乗せられてきます。
*基本的に手前の取りやすいものから取ります。
*末客のお菓子が「残りもの」と見えないよう、中央のお菓子が最後に残るような心遣いができると素敵ですね。(決まりではありません!)
6.箸の先を懐紙の端で拭き、綺麗にする
7.箸を菓子器の上に戻す
*左手を箸の下から受け、右手を上から箸の中央を取る
8.菓子器を両手で持って次の人の前へと送る
9.お菓子を食べる
~お菓子の食べ方~
*懐紙を左手のひらの上に乗せて、菓子切り(黒文字)で切って食べます
*お菓子の大きさにもよりますが、切るのは2~3回程度。
細かく切り過ぎずに、手早く食べましょう。
*亭主側はお菓子を食べ終わるタイミングを見て抹茶を出します。
亭主を待たせないことも客側の心遣いです。
10.懐紙・菓子切りをしまう
~しまい方~
*菓子切りは懐紙で拭きましょう。
*使用した懐紙は、菓子のカスが落ちないよう八つ折り程度に折り、片づけます。
懐紙の束の間などに入れておきましょう。
*懐紙は抹茶を飲んだ後にも使用します。
手に取りやすいところに持っておきましょう。
【茶道の作法】抹茶の飲み方
お菓子を食べ終わった頃を見計らって抹茶が出てきます。
この時、茶碗の正面が自分側に向けられて置かれます。
1.隣りの方に「お先に」と挨拶をする
2.畳の縁(ヘリ)の内側に取り込み、亭主に向かって「お点前頂戴いたします」と挨拶をする
3.茶碗を右手で取り、左手のひらの上に乗せる
4.茶碗を軽く掲げ、感謝を表す
5.右手で茶碗を時計回りに2回ほど回し、正面をよける
*正面をよけることで、遠慮する気持ちを表します。
6.抹茶を飲む
*「三口半で飲み切る」とも言われますが、無理せずにいただきましょう。
7.最後の一口は、“吸い切り”をする
*吸い切り:「スッ!」と音を立てることが「ごちそうさま」の合図となります。
8.飲み口を指で拭く
*口紅が残らないよう注意しましょう。
*汚れた指は、懐紙(お菓子の「10」で使用したもの)で拭きましょう。
9.茶碗を時計と反対周りに2回ほど回し、正面を自分側に戻す
10.右手で畳の縁外に置く
11.茶碗の柄などを拝見する
~茶碗の拝見~
*畳に両手をつき全体を見てから、持ち上げて回したりしながら周りを見ます。
茶碗を置いて、最後にまた両手を畳について全体を見ます。
12.茶碗を右手で持って、左手のひらに乗せる
13.右手で時計回りに2回ほど回し、相手(亭主)に正面を向けて返す
終わりに
初めのうちは手順が気になってしまうと思いますが、その背景にあるのは同席した方や亭主への感謝の気持ちや心遣いです。失礼のない所作と無駄のない動きで、お茶の場を気持ちよく過ごしましょう。
そして何より自分が楽しみましょう!
茶道ではじめに覚えるべき、道具の名前一覧
茶道を始めたばかりの方や、茶道を始めてみたい方にとってハードルとなるのは、道具の数々ではないでしょうか。
日常生活では使わないものばかりなので、名前も分からず、何に使うのかもイメージできないかもしれません。
そこで、ごく基本的なお点前(おてまえ)で使用する道具について名前や使い方を一覧でご紹介したいと思います。
茶道の道具、名前一覧
1.茶碗(ちゃわん)
お抹茶をいただくための器。
さまざまな産地の独特な焼き物があり、絵柄のある・なしなど種類が豊富です。
季節によって、「筒茶碗」や「平茶碗」といった形が異なる茶碗を使用することもあります。
*濃茶(こいちゃ)で使用する茶碗と種類が異なります。
2.茶筅(ちゃせん)
抹茶を点(た)てるための道具。
竹の皮を割いてブラシ状の形に作られています。
穂先が非常に繊細で折れやすいため、扱いに注意が必要です。
洗う時は、内側と外側からつまんで、穂先に向かってしごくように抹茶を落としましょう。
*薄茶は「点てる」と言いますが、濃茶は「練る」と言います。
3.茶杓(ちゃしゃく)
抹茶をすくうための道具。
竹を反らせて匙の形にしています。真ん中あたりに“節”のあるものを使いましょう。
節が端(根元)にあるものは、「元節(もとぶし)」と言って、上級者のお点前で使用します。
お手入れは、水に浸けてしまうと竹がまっすぐに戻ってしまうため、汚れても水で洗ってはいけません。乾いたティッシュ等でふき取るようにしましょう。
4.茶巾(ちゃきん)
茶碗の水気を拭くために使用する、麻でできた布。
布の二辺の端が糸で“かがられて”おり、それぞれ向きが異なります。
使用する時は向きを間違えないように気を付けましょう。
*最近では、「新お茶巾」といって不織布でできたものもあります。
感染対策用として使い捨てができるので安心です。
ただ、布の茶巾と比べて滑りにくいので、個人的には少々扱いにくい印象です。
5.棗(なつめ)
抹茶を入れる器。
棗の実に形が似ていることから名付けられています。
形や大きさもさまざまですが、初心者が一般的に使用するのは「中棗(ちゅうなつめ)」です。
蒔絵や螺鈿などの装飾のあるものや、木地を活かしたものまでさまざまあります。
6.釜(かま)
お湯を沸かすための道具。このお湯で抹茶を点てます。
鉄でできており、地味な印象があると思いますが、意外にかわいいデザインも多いです。
蓋の“摘み”や“環付(かんつき:運ぶ時に使用する胴から突起している箇所)”がどんぐりだったり、ひょうたんだったり、龍だったりします。
けっこう凝っているものがあるので、注目してみると面白いと思いますよ!
7.水指(みずさし)
水を入れるための器。この水で釜のお湯の温度を調節したり、茶碗を洗ったりします。
茶碗と同じく、焼き物でできていることが多いです。
ただし、蓋は同じ焼き物でできている「共蓋(ともぶた)」と、木に漆が塗られている「塗り蓋(ぬりぶた)」の二種類があります。
8.柄杓(ひしゃく)
お湯・水をすくうための道具。
竹でできており、炉用(11月~4月)、風炉用(5月~10月)により使い分けをします。
柄杓の柄(え:持つ側の一番先のところ)の作りで見分けます。
竹の表面側から斜めに切られているものが炉用。竹の裏面側から斜めに切られているものが風炉用となります。垂直に切られた“兼用”もあります。
9.蓋置(ふたおき)
釜の蓋を置くための道具。
竹、焼き物、金属などがあり、基本的には竹を使用しますが、棚を使ったお点前の場合は焼き物や金属のものを使用します。
竹の蓋置は、炉・風炉によって使い分けをします。
節の位置が上端のものは風炉用、中央あたりのものは炉用となります。
10.建水(けんすい)
茶碗をゆすいだ後のお湯を捨てるための入れ物。
金属、木地、焼き物などがあります。
お稽古では丈夫な金属製の建水を使用することが多いように思います。
ただ、お点前の始めに建水に柄杓を乗せて運ぶのですが、滑りやすいので注意が必要です。また、終わりにはお湯が入っているので熱くて持ちにくいなど、少々難点もあります。
個人で用意するお道具
ここまでは、専門的な道具ですので、茶道教室などで用意されていることがほとんどです。茶道のお稽古をするにあたっては、帛紗など個人で用意するお道具もあります。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
覚えるべき道具が多くて大変だと思いますが、それぞれに無くてはならない道具です。
ぜひ楽しみながら覚えていきましょう。
茶道体験、選び方のポイントは?
茶道に興味がある・触れてみたい、海外から来た友人に日本文化を紹介したい、という人にとって、入口となるのは茶道体験講座ですよね。
そこで東京都を中心に「茶道体験」を謳っている施設について調べてみました。
すると、茶道体験といってもさまざまなタイプがあることが分かりました。
私自身も茶道に携わっている観点から、「茶道体験」を選ぶポイントについてご紹介したいと思います。
*こちらで紹介するのは、単発で開催されている「体験」に絞っています。
継続的にお稽古をする茶道教室の体験とは異なりますので、ご了承ください。
何を体験したいか?
ご自分が何を体験したいのか、希望を整理してみましょう。
「茶道体験」と呼ばれるものには、主に下記の3つのタイプがあります。
- 抹茶と和菓子の食べ方、作法を知る体験
お客様としてのマナーを知る体験ですね。 - 自分で抹茶を点てる体験
「1」に加えて、自宅で抹茶を楽しむコツが学べます。 - プロのお点前を見て、お茶会の雰囲気を楽しむ体験
より正式な茶道の空間を体験することができます。
「3」にいくほど、より深く本格的な茶道体験をすることができます。
施設によっては、和菓子作りとセットだったり、石臼でお茶をひく体験、着物を着てお茶会体験に参加したりと、+αの体験ができるところもあります。
ご自分がどういった体験をしてみたいか、イメージしておきましょう。
正座する・しない?
抹茶と和菓子を食べるだけでも、30分程度の時間はかかります。
正座で足がしびれて、せっかくの抹茶や和菓子の味が味わえない!?
説明が頭に入らない・・・ということもあるかもしれません。
もし、正座に自信がなければ立礼(りゅうれい)といって、正座をしないでテーブルと椅子での体験を選ぶのも手かと思います。
本格的な体験になるほど、和室で行われるケースがほとんどとなります。
「茶道体験」と謳っている場合、もちろん「足はご自由に~」と言っていただけるはずなので、正座に自信がないからといって簡単に諦めないでくださいね!
しかし、そうは言ってもあからさまに足を崩すわけにはいかないので、長いフレアスカートを履いていくなど、足が目立たない工夫をしましょう!
所要時間と費用は?
体験内容の深さによって所要時間も長くなり、費用も高くなっていきます。
施設によっても幅がありますが、おおよその相場感は下記となります。
- 抹茶と和菓子の食べ方、作法を知る体験
所要時間:20~45分程度
同席している人数によると思いますが、30分前後で終わるものが多いです。
費用:2000~4000円程度
立礼(りゅうれい)もあれば、和室で体験するところなどもあります。
和室の場合、襖の開け方・閉め方といった和室での振る舞いのマナーも含まれることがありますので、気になる場合は事前に確認しておくと良いですね。
もし、作法などの説明は不要で、日本らしい空間で抹茶と和菓子を食べられれば良いという場合は、新宿御苑、六義園、浜離宮といった日本庭園で1000円弱で楽しむことも可能ですよ。
- 自分で抹茶を点てる体験
所要時間:45分~1時間
使用する道具や抹茶の点て方など、説明が増えるので所要時間も少し長くなります。
費用:3000~1万円程度
施設の格式、使用する道具によって金額の差が大きいように思います。日本文化を紹介するカルチャー施設などでは、気軽に体験できる分、比較的安いです。
一方、ホテルの茶室など、非日常な体験も味わいたい場合は、やはりそれに応じて高くなります。
- プロのお点前を見て、お茶会の雰囲気を楽しむ体験
所要時間:1時間~1時間半
主に和室での振る舞いのレクチャー、お点前の拝見、抹茶をいただく流れとなります。
費用:4000~1万円程度
やはりそれなりの手間がかかるため、費用も上がってきます。
本格的な体験となるため、実施している施設も少ないようです。
さらに懐石料理がセットとなるケースもあり、その場合は所要時間が1時間程度長くなり、費用も 2~3 万円程度となります。
開催人数について
2名以上で開催のところが多いです。
団体客も受け入れて、20~30人で開催といった施設もあるようです。
初めて茶道体験をするのであれば、先生の目が行き渡り、質問もしやすい環境が望ましいと思うので、5名程度、多くても10名程度の定員で開催しているところがおすすめです。
流派について
茶道には、さまざまな流派がありますが、体験の範囲で習うお点前や抹茶のいただき方には大きな差はないと思います。
実際、単発で開催している茶道体験において、流派を明示しているところはまずありませんので、気にせず参加してみてください。
終わりに
茶道体験、といってもその幅はかなり広いことがお分かりいただけたと思います。
一般に「茶道は敷居が高い」と言われることが多いですが、基本は抹茶と和菓子を楽しむものです!
ネットで「茶道体験」と検索するとさまざまな施設が挙がってくると思いますが、今回のポイントに添って、ぜひご自分に合った茶道体験を楽しんでください!