茶道具について 茶杓
茶杓とは
茶杓とは、茶入や棗から抹茶をすくい、茶碗に入れるための道具です。竹製がほとんどですが、象牙製や木製、蒔絵が施されたものもあったりします。
また、茶道具の中でも茶人自ら創作することの多いお道具のため、鑑賞の際は櫂先(かいさき:反っている先の部分)の反り具合、広がり具合の違いや、「銘」から人となりを感じることができる、美術工芸品とは少し違った位置づけのお道具だと思います。
お茶会では、茶杓を入れる「筒」もまた鑑賞の対象となります。筒には花押や銘が書かれているので、その筆跡からも作者のことを伺い知ることができます。
茶杓の格について
茶杓はほとんどが竹製であることから、竹の「節」の位置がどこにあるかで格が分かれています。
真:節無(ふしなし)
最初の茶杓は、中国から渡来した象牙の茶杓だったそうです。それを村田珠光が深見珠徳に竹で写させたため、節を避けて作ったことから「節無」の茶杓となりました。これは「珠徳形」と呼ばれます。
行:止節(とめぶし)
武野紹鴎が、茶杓の最下部を節とした「止節」を作りました。紹鴎形と呼ばれます。
草:中節(なかぶし)
利休が節を中央とした「中節」の茶杓を考案しました。利休形と呼ばれます。現代では中節の利休形が標準とされ、筒も添えて作者が署名する形式が整いました。
茶杓の「銘」について
先に挙げたように、茶杓は茶人自ら創作することが多く、特に利休以降から「銘」を付けることが主流になったそうです。
銘は、禅語や和歌、おめでたい言葉や季節を表すものなどが多く使われ、文学的な側面も表れてきます。お道具の取り合わせにおいても、茶杓の御銘は注目されるものの1つとなっています。
お茶のお稽古の場では、いかに季節や取り合わせを加味した”素敵な御銘”を言えるかが、その人のセンスが問われるところ(!)であり、日頃から”言葉探し”をすることになるのです。
終わりに
茶杓はほんの20センチほどの”竹の棒”で少々地味ですが、歴代家元はもちろん、大名茶人や数寄者の作ともなると、何百年も大切にされ、その人に想いを馳せられる貴重なお道具でもあります。
また、茶道を学ぶ人にとって「茶杓の銘」は頭を悩ませるタネでもあります(笑)。ただ、この言葉の世界を少しずつ広げていくことで感性が磨かれ、豊かな暮らしが感じられるようになるのではないでしょうか。